その日の朝、目が覚めると宿の窓のすぐ下から、ポポポポポ……と船のエンジン音が聞こえてきました。ああ、やっぱりこれは。と思ってカーテンを開くと、昨日までバイクの行き交っていた道はミルクコーヒーみたいな色の川へと変貌し、家財道具をせっせと運ぶベトナム人の姿が向こうからこちらへ。
5度目に訪れたホイアンは、10年ぶりの大洪水でした。
もともとこの町は土地が低く、雨季になると川べりは水に浸っているのですが、こんなにも町全体が冠水してしまったのは初めてだそう。
おそるおそる階下へ行くと、宿の1階までたっぷりと水が入り、螺旋階段の先っぽが船着場のようになっている。これじゃあどこへも出られやしない。2階の狭い廊下では、配給のインスタントフォーやコーヒーが調理されています。
部屋へ戻ってもすることがないので、フエから合流していた生徒さんと一緒に、柿の種をつまみつつ缶ビールを飲んでいました。今日は美味しいものが食べられないですねぇ…なんて、どこまでも緊張感のない旅人たち。
午後になり、とにかく「道」のある場所まで移動し、ひとまずホイアンを抜け出そうということになりました。ここぞとばかりに登場した流しの小舟(もちろん有料、しかも法外。ベトナム人は強かですね)を捉まえたあとは、素早くビールを飲み干し荷物をまとめたり、2階のベランダから梯子伝いに舟へ降り立ったり。日本人3名、欧米人2名、ベトナム人1名、なかなかドラマティックな大脱出を成し遂げたのでした。
惨事の前日は、こんな具合。ズボンの裾をたくし上げ、ビーチサンダルでバシャバシャと歩くくらいの水位でしょうか。
バケツをひっくり返したような土砂降り雨にも関わらず、どうしてもどうしても食べたかったホイアン名物、鶏飯屋を訪ねる。こんな夜だってビニールテントの下は通常営業、酔狂な旅行者にも、店のおばちゃんたちは優しく笑いかけてくれるのでした。
→より詳しいホイアン大洪水の経過は
こちらから(緊張感のない私たちの姿も!)