私のまわりには、どういうわけか大器晩成型の酒呑みがたくさんいます。
呑めないのかぁ。別に構わないけど、でもやっぱりちょっとつまんないな。という第一印象だった男の子。1杯目からカクテルとは、なんと可愛らしいことか。と初対面にこっそり憧れを抱いた女の子。そういう人たちが、だんだん私の気にも留めず、いつしか悠々とグラスを傾けるようになってゆく様子は、なかなか幸福な眺めだと思うのです。
そんな酒呑みの1人が、素敵なイタリア料理レストランへ連れて行ってくれました。数年前、居酒屋のビール1杯で顔を赤くしていた彼も、今では「美味しいワインを愉しめますよ」なんてさらりと言う。ああここにもまた1人。私が無性にわくわくしてしまったのは、言うまでもありません。
ひさしぶりに舌鼓を打つイタリア料理、秋らしい深みのあるメニューをいただきました。サーモンピンクをしたアン肝のパテ、ぱっくり割ったアボカドに半熟卵をのせたもの。鴨肉とポルチーニ茸のラザニア、トマトが控えめに主張するペスカトーレ、優しくどこか香ばしいクリームソースのパスタ。メインには、かじきまぐろをシンプルな香草焼きで。
まったく非の打ち所のない食卓を共有してくれた友人へ、心から感謝せずにいられませんでした。食べたものを隅から隅まで記憶しているなんて、そうそうにあることではないのですから。
場所は新宿。心地良い渋みの赤ワインを1本、軽やかなハウスワインを2杯ずつ。
新宿は東京で、赤ワインはあらゆるアルコールのなかで、それぞれ私が2番目に愛してやまないものです。