がつんとスパイシィなものが欲しくなって、インドカレーを食べに行きました。
ココナツミルクとタマリンドをベースにしたフィッシュカレーは、南インドのカレーなのだそうです。きれいなオフホワイトのスープに浮かんだ、身の柔らかい淡白な白身魚。パラパラしたお米と一緒にいただくカレーは、甘辛酸味のバランスが絶妙です。濃厚でありながらも、どこか南風を感じる軽やかな口当たりは、すべての料理において私の好むところ。
インド料理には、宗教的な空気から生まれる静謐さと、どうにも明るいカジュアルさが見事に同居しているようで、常々とても興味深く感じています。私の料理の原点は、いつだって好奇心と探求心。インドにはまだ足を踏み入れたことがないけれど、猥雑で混沌としたそのイメージは、だからずっと心を惹き付けて離しません。
学生だった頃、私がベトナムへ熱を上げていたのと同じように、休みとなればインドへ旅立って行く友人がいました。何がそんなに好きなの。という愚問に、彼はいつも真面目に答えてくれました。
「インド行ってな、こう道端に座ってるやん。そしたらなんかこう、シンプルに、人が生きてるなぁって感じがするねん」
奥深く複雑に絡み合うスパイスを舌にのせながら、シンプルに生きることを知る自分を想像してみる。ああやっぱり。やっぱりいつかインドへ行ってみたいなと、胸を熱くせずにはいられないのです。