舌を直撃する強烈な唐辛子の辛味。すうっと爽やかなライムや酢の酸味。奥行きを与える砂糖の甘味。それから、ナンプラーや大豆醤油の放つ旨味の底力。ずばっと突き抜ける辛さのなかに潜むタイ料理の妙は、この4つの味覚によって作り上げられているように思います。
平たい米麺を味の四角形で調理する、タイ風焼きそば「パット・タイ」。ピーナッツをふり、干し海老を混ぜ合わせ、コクと食感も楽しみます。
確信犯的なハーブやスパイスの使い方もまた、タイ料理のおいしさの秘訣かもしれません。
市場の食堂で脳天まで痺れさせた、鶏挽き肉のバジル炒め。辛さから目尻に涙を溜め、額にはどうどうと汗を流し、それでもまだ食べたいのはなぜなのでしょうか。
シンプル・イズ・ベスト。などという文句は軽やかに吹き飛ばし、複雑な表情を垣間見せるこんな料理たちには、実にアジアならではの強い味わいがあります。