美味しかったものは、舌や体が記憶しているうちに、まず作ってみる。それが信条。旅から帰ってくると、私の試作熱はぐんぐん上がります。
今日は「豚肉のマム・ルック炒め」を作ってみました。
マム・ルックというのは、アミ(小エビ)を発酵させて作る、ベトナム中部地方を代表する調味料のひとつ。細く刻んだ豚肉を、このマムやら砂糖やらで味を付け、じゃっと勢いよく炒め合わせます。ごはん泥棒!と思わず叫びたくなるほど、心地良く甘じょっぱいできあがり。
このおかず、南部の大衆食堂で度々口にしていたのですが、美味しさの秘密が実は中部の調味料かもしれないという、なかなかスペシャルな一品です。
旅の記憶の整頓は、試作に限ったことではありません。
マム・ルックのほかにもたっぷりと買い込み、ガムテープでぐるぐる巻きにしてきた大切な調味料は、頑丈な瓶に移し替えて冷蔵庫へ。ここから一匙ずつすくい、炒め物や煮物なんかに使います。
フエの市場で一目惚れして購入した、適度な厚みとコンパクトなサイズがお気に入りの木製まな板は、ハーブをざくざく切ったり、薬味を刻むのに活躍。
ホーチミンでいつものように買ってしまう素朴な食器たちは、きれいに洗って食器棚の定位置へ。
頑張って持ち帰ったプラスチック製の椅子8脚なんて、もうずっと前から置き場所が決まっていたかのように、我が家の一角へ堂々と佇んでいます。
旅をするすると日常生活へ馴染ませ、ベトナムの空気を日本の台所へも馴染ませてみる。そうすることによって、私はいつも、また新しい何かを作りだせるような気がするのです。