「それにしても、同じ日に、日本全国の人が、多少の違いはあるにせよ、まったく同じ食べものを食べている。そう考えただけでゾクゾクずるのは私だけだろうか?」
いつだったか、何かの本でこんな文章を読み、心底共感したものでした。
そうそう、そうなの。おせちという食べものには、私も毎年ゾクゾクしてしまいます。
お正月のために、おせち料理を作るようになりました。
私の作るおせちは「アジア風」。日本の伝統的な食文化へ、例えばベトナム料理などという異なったエッセンスを加えるわけですから、双方どちら側から見ても、それはいわゆる「現地の味、正しい料理」にはなりえません。つまりこのときばかりは、普段はほとんど手を染めない(むしろ戸惑いすら覚えることのある)、創作料理というやつをやるのです。でもこれはこれで、ときどきならまあ楽しいのだけれど。
そんなわけで、「アジア風おせち」の献立を練る日々が続いています。
今年は、黒豆の代わりに、浸し豆(青い大豆。枝豆のこと)を使うことにしました。つやつやぷっくり甘い煮物ではなくて、さっと煮てぴりっと唐辛子をきかせたおだしに漬けてみる(中国には枝豆のマリネというのがあるらしい)。
だいたい甘い煮豆って、酒飲みにはあまり需要がありません。そうして私の身内には、新年を酒飲まずして迎える人は、おそらく1人もいないのです。