先日、「情熱大陸」という番組を見ていたら、シェフ・パティシエとして働く日本人女性が取り上げられていました。舞台は、パリの3ツ星レストラン「トロワグロ」。(ところでここの料理は、すべてにおいて酸味を引き立てる。という興味深いメニュー構成だった)
お菓子作りというのは、芸術的でもあり理数系でもある。と常々感じています。
そのパティシエの言葉のなかに、「10g計量を間違えば、それはもうカスタードクリームではないのです」というものがありましたが、まったくそのとおりなんだろうと思う。理科の実験が大好きだったというのにも、なるほどと頷いてしまう。
あまり好んでは食べないほうなのですが、甘いものに関して語るなら、私は一点豪華主義。たくさんのスイーツを比べながら食べ歩くよりも、「あの店のあれ」と目指して行く。ショウケースにずらりと整列する美しいケーキの数々に心躍るというよりは、レストランで贅沢にいただく「デザート」としての一皿に感動する。そういう性質です。
例えばフランス料理を食べに行って、素晴らしい料理の余韻をきれいに拭い取ったあとに訪れる、あのわくわくした新しい予感。デザートは、上等であればあるほど良い。そして何よりも私が魅了されるのは、味や形や食感を含め、決して寸分の狂いが許されないのであろう、緻密に計算されたその一皿の構図です。皿へ置かれたケーキやソースやアイスクリームの配置の美しさに、これはもう甘党でなくたって、惚れ惚れせずにはいられません。
美味しく、美しく、食べやすいこと。
3拍子を主張するその人が作る、チョコレートミルフィーユの誘惑は凄まじい。ブラウン管越しに甘いものを眺めながら、ひさしぶりに心からうっとりしてしまいました。