今夜は、「インドシナ」のオーナーとディナー。「月に1回しか電車のらへん」というオーナーは京阪電車にごとごと揺られ、はるばる大阪から京都まで出向いてくださいました。先日に引き続き、再び吉田屋料理店へ(それにしても私はこのお店が好きです)。
するめと大葉のじゅわっと弾けるかき揚げを食べ、熱々の穴子フリットをライスペーパーに生野菜と一緒に巻いて食べ、生ハムと水茄子という不思議に国籍の融合したサラダを食べ、ローズマリーがふわりと香るぱりぱりの若鶏のローストを食べ。吉田屋さんのお料理は、いつものびのびと奔放にポジティヴです。
写真は、珍しくオーダーしたデザート。無花果にフレッシュの葡萄ジュースをかけたもの。果肉にはとろりとした甘味が凝縮され、葡萄の酸味との相性は抜群。シンプルな食材へかけるほんの一手間が、料理人のセンスなのかもしれません。
私が「インドシナ」で働こうと思ったきっかけは、オーナーの見据えるベトナム料理の行く先に、どこか強く共感できるものを覚えたからです。「流行りのベトナム料理を食べに行ったら、噂どおり美味しかった」ではなく、「あれ美味しかったなぁ。へぇ、ベトナム料理やったんや!」という、微妙でありながらも、確実に違うその体験。わざわざ食べに行くものでなく、ただ美味しいものとして、日常的にベトナム料理を感じてもらいたい。作り手としても思いは同じです。気負うことなく、わくわくしながら美味しいものを提供するだけ。
ああ今日も美味しくて幸せ。一滴も飲まない社長を前に生ビールをごくごく飲み、私はすっかり寛いだ気持ちになりながら、例えば吉田屋さんの料理に流れる自由な空気を愛しているということ、自分の憧れる料理屋の姿勢がこんなふうであるということが、少しでもオーナーに伝わればいいな。と思っていました。