なんでベトナム料理が好きなんですか?と聞かれたとき、こういうところです、とお伝えしたい1品。
Banh mi hap(バイン・ミー・ハップ)、訳すと「蒸しフランスパン」。
フランス統治の長かったベトナムで、フランスパンがおいしいのは有名なお話。パンといえばフランスパン、というほどに庶民的食材です。それゆえに扱い方もわりとラフなのがよくって、これは、食べきれずにかたくなったフランスパンをうまく使いきるためのアイディア料理というところ。肉そぼろをのっけて蒸し、葉っぱやハーブと一緒に巻いて、ヌクマム味の甘酸っぱいタレにつけて食べます。蒸すことでフカフカとまたやわらかく持ち直した、パンの新たな食感に目からウロコ。
異国の食材や食文化をすんなり吸収しつつ、でも自国風に自由にアレンジすることをいとわない。私がベトナム料理に魅かれる理由をひとつ挙げるとしたら、野菜たっぷりだからとか日本人の味覚に合うからとかではなく、たぶんそういう自由な発想力やなぁと思う。料理って、柔軟にしなやかであることがいちばんなような気がするのです。