来月のレッスンで作るバナナ焼き餅は、私が好きな数少ない甘味。
これをおやつには食べられないのですが、朝ご飯には味も量もピッタリくるので、旅先ではアイスコーヒー片手にときどき屋台へ駆け寄ります。素朴な味わいがいかにもベトナムらしい雰囲気で、餅米にはココナッツミルクでほの甘い香りがついています。日本のようになめらかな餅ではなく、ちょっと米の粒々が残った食感がまたおいしい。
そういえば何年も前、まだ学生時代にベトナムを旅していた頃、朝ご飯にローカルな店などへはとても足を運ぶことができず、外国人向けの安いカフェでバナナパンケーキというのをよく食べていました。ペラペラと薄っぺらく、たぶん小麦粉に米粉も混ざったようなパンケーキに、缶入りのチョコレートシロップをたっぷりかけて食べるのです。特においしいわけでもないのに、この異国で何を食べたらいいかよくわからず、毎朝そればかりを注文しては食べ、かろうじてコーヒーだけはベトナムコーヒーと呼ばれるものを啜っていました。
今では私も屋台で朝から餅をほおばり、ホーチミンのカフェもずいぶんお洒落になってしまいましたが、あの薄味のくせに甘ったるいパンケーキはまだ健在なんだろうか、とふと思い出します。